うなぎの現状

01 ニホンウナギの生態

世界に「うなぎ」は19種類いますが、そのうち食用になるのは、ニホンウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギ、ビカーラ種(東南アジア生息)の4種類のみです。
うなぎは1億年前から生息しており、最も古くから存在するのはボルネオ島近くに生息するボルネンシスという種類です。その祖先がうなぎのルーツと言われています。

ニホンウナギとは、日本の河川・近海に生息するうなぎのことですが、その産卵場所が日本から約3,000km離れたマリアナ諸島西方海域(マリアナ海溝の北側)であることが分かったのは、つい最近、2009年のことです。それ故、古くから謎の多い生物と言われてきました。
その産卵場所を突き止めたのは、日本の塚本勝巳(つかもと・かつみ)教授率いる研究船・白鳳丸(はくほうまる)の一員でした。

不思議なことに、うなぎは新月の夜に卵を産みます。1匹の雌うなぎからは約300万粒の卵が闇のように暗い海の中に放出され、同じタイミングで雄うなぎが精子を放出して受精します。これは、外敵から卵を守るだけではなく、月の満ち欠けによる潮の満ち引きと関連していると研究されています。

図1 レプトセファルス
出典:FRA NEWS「ウナギ研究の歩み」(国立研究開発法人 水産研究・教育機構,2017.3)

卵から出てきた赤ちゃんは、「レプトセファルス」(図1)と呼ばれる幼生になります。レプトセファルスとは、“小さな頭”という意味です。体長は10~60mmで、透き通った葉っぱのような形をしています。まるで深海魚のように、深い海の中で漂いながら暮らすのです。

北赤道海流と黒潮の流れに乗りながらレプトセファルスは変態し、「シラスウナギ」と呼ばれる稚魚に育ちます。
卵から約半年後、レプトセファルスからシラスウナギへの変態が終わると体が縮んで、体表面積が小さくなるために海流の流れから取り残され、日本や台湾、中国、韓国の河口にたどり着きます。これら別々の国の河口で捕獲されるシラスウナギでも、すべて同じニホンウナギ(日本鰻,学名:Anguilla japonica)という種なのです。

図2 黄ウナギ

河口で捕られたシラスウナギ(稚魚)は、養殖場へ運ばれます。
一方、河口で捕られなかったシラスウナギは、「クロコ」と呼ばれる黒い体の稚魚になって川を上り始めます。クロコは、川の脇にある岩を蛇のように体をくねくねしながらよじ登ります。また、川を上らず、一生を海で過ごす「海ウナギ」も存在します。

川を上ったうなぎの体は黄色くなって「黄ウナギ」(図2)と呼ばれ、川で生活を始めます。うなぎは基本的に夜行性で、目が悪く鼻の利く魚です。日中は暗い巣穴にいて、夜になるとエビやカニ、小魚を食べます。体長は数十cmになります。

図3 ニホンウナギの生活史(推定)
出典:完全養殖への挑戦その1(田中秀樹,国立研究開発法人 水産研究・教育機構,2009)

川や池などで5~10年暮らした後、体が黒っぽい光沢を持ち、体長が50cm~1mの「銀ウナギ」になります。銀ウナギに光沢があるのは、アジやサバのお腹と同じグアニンという金属光沢をもたらす物質が皮下にたまるためです。銀ウナギは産卵のため、雄雌ともに再び海に帰ります。ちなみに、稚魚の段階で雄雌の違いはなく、体長が20cmを超えた頃に決まるそうです。
海に出た銀ウナギは、約半年をかけて日本から3,000km離れたマリアナ諸島西方海域(マリアナ海溝の北側)まで泳ぎ、産卵場にたどり着きます。そして、卵からかえったレプトセファルスが海流に乗りながらシラスウナギになって日本に戻ってくるのです(図3)。

このように、うなぎは海と川を行き来する「回遊魚」であり、その生態の全容は未だ謎に包まれているのです。

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